
西川由里子
NISHIKAWA Yuriko
西川は誰もが目にしたことのある瓶や林檎を基軸に、絵画という枠の中に絵の具という物質でその姿を繋ぎ刻んでいく。
瓶の作品では、瓶とその周辺を包む空気の層や光そして物の存在そのものを表現している。林檎の作品では、刻一刻と変わり続ける時間/空間の中で林檎の像を凝視しながら、そのイメージを増幅し描いている。
デジタル社会が加速し情報過多な現代において、目の前にある物や居場所の"ありのままの手触り"を追求し続ける彼女の絵画には、見えないものを見せる力がある。
素材には油彩・染料などを使用し、色彩豊かな物質性のある力強いブラシストロークやマチエールが作品上に表出する。
それは、私たちが今生きている現実空間へとつながる実在の息遣いとなって立ち現れてくるだろう。
■略歴
1996年2月24日生まれ、東京都在住
2014 女子美術大学付属高等学校 卒業
2018 日本大学芸術学部美術学科 卒業
■林檎像シリーズについて
林檎という物体は、聖書や美術史において重要なモチーフとして扱われてきたり、現代では某企業のアイコンマークとして扱われてきたりと、私たちの日常の中から思想の中にまでさまざまな形で象徴的に扱われてきた。
しかし、実物を見ながらキャンバスに油彩で描くという古典的な手法を用いて2017年に始まった西川の《林檎像》シリーズでは、林檎を象徴的に扱うのでもなく食用として実用的に扱うのでもなく、
それらによって覆われた複数の意味を排除しただありのままの像を描いていくことを試みている。目の前に林檎を置き、1つのキャンバスに1つの林檎のみを描き、実在する林檎の境界面をじっと見つめながら刻み込む。
それは概念的に固定化された林檎のフォルムと個として実在する無骨な林檎の輪郭の対比、そして何枚も繰り返し描かれていくことで浮かび上がる差異によって確かな手触りが生まれてくることだろう。
■作家SNS
■参考作品

(写真内2作品)
林檎像
2019
油彩、アクリル
各300×300mm

(写真内3作品)
林檎像
2019
油彩、アクリル
各180×140mm

(写真内6作品)
林檎像
2017
アクリル
各300×300mm